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Galerie vivant アートブログ~空のように自由に~

Galerie vivant アートブログ~空のように自由に~

2010年8月31日火曜日

■上海ポスター&カレンダー

今回展示しているポスターのほとんどは、タバコの宣伝ポスターになる。



ヨーロッパのポスターと違うのは、掛け軸のような体裁のため、細長いタイプが多い。

実際に展示されていたらしく、細い金具で上下留めてある。表は宣伝用のイメージ。

裏にカレンダーが印刷されているもの、表にカレンダーがついたものもある。



この作品は、カレンダーの年代に西暦年代が入っているため、1935年に印刷されたものであることがわかる。上海に租界があったのは、1937年までで、当時の上海は海外文化を受け入れた中国でも先進的な都市であり、印刷技術も優れている。



1990年頃、上海に行った時、色々ポスターを探したが、60年代後半の文化大革命でまったく印刷文化の片鱗も無かった状況からは、想像もつかないほど進歩していたことがわかる。


その後の上海の進歩はすさまじい勢いの様子だが、単なる一枚のポスターからもいろいろな時代背景が想像できて楽しい。


マダム

■上海メゾチント作家庄漫さん

今週から上海で30年代に印刷されたポスターを展示しているが、言葉が理解できないため説明が難しい。

                                 

ポスターでは、キャッチフレーズ、コピーが重要なポイントとなる。

思い余って浮かんだのが、ヴィヴァンでも個展をしたことのある上海出身の庄漫さん。

彼女は、上海で歯科医をしていたのに、日本に8年ほど前に来日。以来、版画の制作に取り組んできた頑張り屋さん。



メゾチントは、18世紀にヨーロッパで普及した銅版画の一種になるが、非常に根気のいる技法になる。

日本でもメゾチントを専門にする作家は非常に少ない。歯医者さんをしていたと聞き、メゾチントに取り組んでいる理由が分かったような気がした。モノクロの世界が中心で、若干色を加えた作品もあるが、メゾチント独特の黒は、他の版にはない独特の深みがある。



庄漫さんの作品は、ビロードのような黒を基調とした、花の作品が多かったが、最近は中国の風景や室内風景などへ広がっている。



庄さんに電話で、案内状に使ったポスターの意味を尋ねると、上の文字は、店の名前。

左右の意味は、美しくなりますよ! 健康になりますよ!という意味だそうです。

おそらく、薬屋か化粧品屋の宣伝ではないかとのこと。


マダム

2010年8月21日土曜日

■「シャガール-ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展 ~交錯する夢と前衛~

に行ってきました。日々ヴィヴァンでの業務で多忙な日々でしたが久々に連休がとれたので、兼ねてよりチェックしていたシャガール展に足を運びました。



結論。とても素晴らしい展覧会でした。☆5つ!!

僕個人、非常に感激したのはシャガールが美術を手掛けた歌劇「魔笛」の舞台美術のシリーズでした。

今そこで描かれ、まだペンの熱も冷めてないような衣装や、舞台美術案のドローイング。
シャガールの個性とその世界観、それを自由に表現する姿が生々しく輝きを放っていました。

そういえば前にヴィヴァンにこの「魔笛」のオリジナルリトグラフポスターがありましたが、
ミュージアムショップでも業者さんが売っていました。0が1・・2・・3・・  なるほど。。


もうひとつ感心したのは展覧会自体の造りでした。最初はちょっとちょっと・・シャガールを見に来たんですけど・・・と思わせつつ次第に会場を進むにつれ「おお・・。」「おおお・・・っ」そして最後は泣かせてくれるじゃないですか。。うぅ。。

っと展覧会そのものの構成が良かったのも非常に印象的でした。

ともかく久々に心が高揚したまま会場を後にできた展覧会でした。

帰りは先日ヴィヴァンが企画した版画展「宮山加代子木版画展」でお世話になった丸善ギャラリーがある日本橋丸善で美術雑誌や本を立ち読み。結局「ネットショップの極意」的な本を買って丸善を後にしました。

帰っていつものように庭の手ずくりシャワーで汗を流したのでした^^

タっちゃん

2010年8月16日月曜日

■水木しげるの「妖怪幻想」ポスター

最近水木しげるの話題が多い。NHKの連続ドラマが始まっているのと、終戦記念日の
せいかもしれない。



・・・まてよ、でも確か水木しげるといえば、ヴィヴァンを開設してまもなく、「水木しげる原画展」というのを開催したことがあったよな。など、独り言をいいながら引き出しをあけると、まさしく展覧会開催の年に発売されたレコードの宣伝ポスターがでてきた。

年代をみると1978年! 画廊のスケジュールノートが1979年から保存されており、その前のスケジュール表が引越しでみあたらないため、正確な記録がわからないほど昔のこととなる。

当時、水木しげるのペンによる細密描写に大変興味があり、ゲゲゲの喜太郎ファンでもあったため、是非展覧会をしたいと先生に申しいれた。先生のお宅に伺うと、緊張している私の前で、戦争のことから、バリ島の細密画のことまでほとんど一人で長時間語り、大変楽しい気分になったことを思い出した。テレビで語る先生のご様子は昔と変わらぬ、衰えを知らぬお元気な様子に、あいかわらずの楽しい口調だった。


ところで、このポスターは、ヴィクターから発売された当時としては目新しいシンセサイザーをとりいれた前衛音楽のレコード【妖怪幻想】の宣伝用ポスターとして、印刷されたもの。当時のレコードはまだLP盤。レコードジャケットにも妖怪たちがつかわれたモノクロジャケットだったが、引越しのとき某ギャラリストに差し上げてしまい、今思うとちょっと残念。でも、こうしてみると、ポスターの語る時代背景は、実に意味深い。


マダム

2010年8月12日木曜日

■「生命―孤高の画家 吉田堅治



8月9日 夜10時からNHKの特別企画で「生命―孤高の画家 吉田憲治」が紹介された。

1966年にパリのアトリエ17で出会っていらい亡くなる直前までの長いお付き合いだった吉田さんは、既に故人となっている緒方一成のパリ時代の苦楽を共にした親友でもあった。
吉田さんとは、生前ほとんど戦争の話をしたことがなく、特攻隊員だったことも今回はじめて知った。

ただ、戦争は、吉田さんの人生にかなりの影を与えていたことも、なんとなく感じていた。
たしかに、パリに滞在し始めた頃の銅版画の色調は非常に暗かった。

不思議な人で、まったくメチャメチャな日本語とフランス語の混在した吉田語で誰とでも話し、強引に理解させてしまうのは、やはり本人の真剣な訴えと人格の賜物だったと思える。吉田さんに文法はいらなかった。普通なら、何年かパリにいると少しはフランス語の上達度がわかるが、吉田さんのように何十年もパリにいて最初から最後まで同じだった人も珍しい。

それでも、交友関係はどんどん広がり、パリを拠点にロンドン、メキシコ、イスラエル、ノルウェーなど、タフに活躍をはじめた。

吉田さんの絵に変化があらわれたのは、日本から呼んだ奥さんと一緒に暮らすようになってからと思う。だんだん絵のなかに金やカラフルな色が現れはじめた。奥さんの恵美子さんも非常に知的で、影から吉田さんを応援している様子がよく伝わってきた。

その奥さんを失ってから、吉田さんの絵描きとしての本当の人生が始まったように思われる。最初、気になっていた金が落ち着きをみせ、広々とした空間が現れてきたのは、一層精神的ななにかを求めていたのかもしれない。

今回の紹介で、日本ではほとんど無名に近かった作家が知られることになった。

既に、評価のある作家のみが繰り返し紹介されるより、このような形で、無名な作家が紹介されることのほうがはるかに意味深く思われる。

再放映は、8月12日の24時15分からです。

 
マダム

2010年8月6日金曜日

■閑話休題:いまどきの若者

昔、もっと若かった頃よく言われた言葉に「いまどきの若者はね」という言葉がある。


大抵、年配者が自身の若い頃と比較して否定的な意味で使われていたので、随分反発した記憶のある言葉だ。それが、最近 ふっと自然にでるようになった。

とはいえ、今日 ご紹介する若者とは、なんとスタッフのタッチャンです。

先日、彼より報告があった。「いやー これでやっと毎日シャワーが浴びられます」

日頃、タッチャンは銭湯に仕事の帰りに寄っているとは聞いていた。タッチャンの住いは高級住宅街の一角に残る戦後のアパート(風呂無し、台所無し、クーラー無し、共同トイレ)の代表的なスタイル。

数年後には解体されるらしいが、今でもこういうアパートが残っていた!魅力的なのは、家賃が安いことと大家さんが親切なことという。

「一体、どうやってシャワーを作ったの」と聞くと、大家さんの許可を得て、ポンプを買ってきてもう一人の住人と割り勘の手作業で創ったとのこと。こうして、ああして動かして、シャワーからお湯がでます。と説明してもらったが、半分は理解不能。でも、お金をかけないで生活するたくましさだけはよくわかった!














たくましいいまどきの若者もいるのよ。

マダム

■久々のハンス ベルメールの銅版画




80年代ハンス ベルメールは、刺激的なシュールレアリズム作家として、多くのファンが

その作品を収集していた。その多くは版画であった。特に有名な作品に【道徳小論】が

ある。10点セットになっていて、和紙刷りとアルシュ紙刷りの合計20点が入っていた。

今回展示している作品はその最後の1点。ここ10年ほどコレクション版画の展示をほとんどしていなかったため、久々のご対面となった。流麗なビュランの線が鋭く美しい。

硬い銅板の上に、ビュランで線、それも曲線を流れるように彫る技は、素晴らしい。

■久里洋二のシルクスクリーン

今年も恒例の夏季ヴィヴァンコレクション展が始まった。

いろいろある在庫作品のなかから選ぶとき、引き出しの中であざやかに見えた作品が、久里洋二のシルクスクリーン作品。連日の暑さの中でブルーの色調が際立って涼しげに見えた。作品は、1987年にヴィヴァンが出版した限定100部の版画集:ファンタジーに入っていた3点のうちの1点「Flower」

単なる花ではなく、花の根元が鉛筆になっていて線をひいている。絵を描く花が正解といえる。久里洋二の独特のユーモアセンスは、日本という国境を取り払い、世界に通用する

センスとしてもっと理解されて欲しい。

マダム